株式投資 暴落・不景気に買う気構えを作る②

 

 暴落・不景気時に買うスタイルを決めるにあたり、最も影響を受けたのがさわかみ投信元代表澤上篤人さんです。

 今から10年以上前から日本に長期投資を根付かせようと活動しており、ファンドや書籍を通じて私もその影響を受けてきました。私自身、いわゆるバフェット本、ウオール街のランダムウオーカー、ピーターリンチの株で勝つなど欧米系の書籍も何冊か読みましたが、すっと受け入れられないというか腹落ちせずに表面を流れていく感覚がありました。

 対して、澤上氏の思想はどれも腹落ちするものばかりで、私の投資スタイルそのものと言っても良いほど影響を受けています。なお、現在はご子息が当ファンドを継いでおり正直言ってその手腕は未知数と言ってよいと思います。ですので、私自身現在は当ファンドへの投資は抑え気味にしています。

 

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 澤上氏の代表的な考えは以下のようなものです

①自信を持って価値判断できる会社しか投資しない

 さわかみファンドはマクロ経済分析(=世の中こうなるという推論)と企業分析を徹底的に行った後、企業にインタビューを行い仮説を検証したうえで投資判断をしています。良くわからないもの、理解できないものは手を出さないというスタンスが一貫しています。個人投資家損益計算書(PL)は見る人は多いと思いますが、当ファンドは貸借対照表(BS)を数年分読み込むことで企業の真の姿を見ることができるとしています。私も日本株は当ファンドの組み入れ銘柄から選択しています。私自身BSを何期分にも渡りその企業をウオッチする時間は無いため、この手法により財務的に問題のない会社を選択できるという安心感があります。

 

 過去に住金(現日本製鉄)が50円を切っていた株価の時に当ファンドのポートフォリオのTOPになっており、「大丈夫かな?」と見ていましたが、原油需要増→シームレス鋼管の大幅増産という推論がものの見事にあたり10倍程度の株価になった状況があり大きなインパクトを受けました。2010年前後に世界経済が低迷している時期に優良日本企業を徹底的に買い、5倍以上の株価となった会社が続出していました。

 

②いつも現金からスタートする

 普通の機関投資家の運用では、株式・債権も目いっぱい詰め込んだポートフォリオを作成しますが、市場の急落などに備えてヘッジをかけておく必要があります。ヘッジを掛けるにもある程度コストが必要でそのコストは運用リターンを削ぐことになります。

 一方、余裕のある個人や長期投資の思想を理解した人だけが集まるファンドは、「いくらでも待つ」というスタンスが取れます。市場の動きが無いときは「徐かなること林の如く」で現金運用しておき余分なコストをかけずに待つことができます。

 

③売り一色で買う理由がつかない時に買う

 良い投資は「余剰資金を自分の理解できる企業が安いときにのみ投資する」というもの。また、投資運用とは「将来の納得に対し、現在の不納得で行動する」もの。投資価値が時間の経過とともに高まっていくものを市場の評価が遅ればせでついてくる状況を良しとしています。以下、澤上氏のコメント抜粋です

 現在の不納得で行動するということは、今ここで買いに走ると「どうしてこんな先行きの見通しが悪いときに買うの? 損するだけだよ」と万人から戒められるときにあえて買いに走ることを意味する。投資運用とは安く買うことに尽きる。皆が不納得の時にあえて買おうとするわけで、そんな行動を説明できるわけがない。これが投資運用の本質である。

  

※次号に続きます。